今後の日本経済はどうなる?

私は人生の大半を日本で過ごしてきたので、とてもこの国に愛着を持っています。ですので、日本について意見を述べる場合にはどうしてもひいき目になりますし、日本経済がこれからどうなるかは大いに気になるところです。
日本経済が世界に及ぼす影響は大きく、日本は今もなお世界第二の経済大国であることに変わりはありません。しかしながら、今後の展望は一般に考えられているよりも厳しく、失業率や国債発行高の増大により、日本経済は、新たな長期低迷のシナリオを突きつけられているように思われます。
つい最近まで、日本人は可処分所得のかなりの部分を貯蓄に回してきました。この貯蓄が、日本政府が低コストで巨額の借金をする受け皿になっていたのです。
さて、ここで非常に大づかみなお話をします。過去10年間に、政府の借金の対GDP比は99%から170%に跳ね上がりました。これは地方自治体の借金を除いた数字です。日本政府は、それだけ赤字を出してでも、1989年に始まった不動産・株式市場の暴落に続く、90年代の「失われた10年」の停滞状態から抜け出そうとしたのです。目的のわからない橋や道路を建造し、ありとあらゆるプロジェクトに資金を提供しました。しかし、経済の回復は極めて遅々としたものでした。
もちろん日本は、最近アメリカで起きたよりもはるかに大規模なバブル経済を2回乗り越えてきました。当時の新聞報道で、東京の皇居付近の土地の一角に、カリフォルニア州のすべての不動産を合わせたよりも高い地価がついたという記事を読んだのを覚えています。今日、日本の不動産価格は大幅な落込みを続けています(場所にもよりますがマイナス50~80%)。日経平均は、20年後の現在、マイナス約75%と更に大きくなっています。
この下落をアメリカに当てはめるなら、さしずめダウ平均が12年間で3,500ドルまで落ち、その状態が続いているといったところでしょうか。
1999年までは、個人の貯蓄プラス年金の比率は12%前後で推移しており、16%という時期もありました。こういった貯蓄の大部分が、国債の引受に充てられたのです。政府は借金を続け、利率は1%台にとどまっていました(現在、日本の10年物国債の利回りは1.3%)。このため、借金をどんどん増やしていっても、予算に占める利払い費の割合はそれほど大きくならずに済んでいたのです。
しかし、事態は変わりつつあります。人口構成が将来展望に影響を及ぼし始めているのです。日本では急速に高齢化が進んでいます。人口は減少しており、出生率は世界最低水準です。依存人口比率は上昇し始めています。現在、日本の生産人口1名あたり1.2名の非生産人口(14歳以下および65歳以上)がいますが、この比率は2020年までには2名になり、その後も増加の一途をたどると予想されます(下のグラフ参照)。

このことは同時に、貯蓄能力の低下を意味しています。退職者の多くは、生活のために貯蓄を取り崩さなければならなくなるからです。次のグラフで、貯蓄率が18%から1.8%に下がったことに注目してください。併せて、年間の純貯蓄高が今では5兆円まで落ち込んでいることもポイントです。

ところが今年度、日本では約33兆円の国債発行が必要になると言われています。そのうえ、国民年金基金が、今年度初めて借金経営に転じると政府に通知した点も要注意です。下のグラフをご覧ください。2006年までは、国債発行残高は増え続けているものの、実際の国債の利払い費は減少していますが、これは、利率が低下したこと(2001年には0.1%)によるものです。しかし、もはや利率を切り下げる余地はなく、利払い費は上昇し始めました。国の負債総額は、今や900兆円に迫ろうとしています。
現在、利払い費は日本政府の予算のおよそ18%を占めています。仮に、利率が2%にまで上がったらどうなるでしょう。そうなれば、いずれ利払い費は倍増します。そのうえ、日本政府は年間予算の30~40%を借金に頼っているのです。負債総額は急速に膨れ上がっています。
日本の人口は縮小しており、労働者一人あたりの退職者数は増加しています。日本の国債発行残高の対GDP比は、先進国の中で最も高い数値です。しかも、その発行残高は毎年7~8%の割合で増え続けており、それとは別に地方債もあります。利率はこれ以上下がりようがありません。貯蓄高が急激に落ち込んでいるため、国債を新規に発行しても、吸収できるとは到底考えられません。高齢化の進行に伴い、数年以内に貯蓄高はマイナスになるでしょう。社会保障給付は増大しています。GDPは減少しており、輸出高は業種にもよりますが約30~40%、工作機械に至っては80%も低下しているのです。
もし利率が、2%どころか1%まで上昇するだけでも、日本の税収に占める利払い費の割合は、程なく今の倍の18%になり、40%になり、そのまま上昇し続けるでしょう。このまま行けば、10年もたたない内に税収の100%が利払いで食われてしまうと考えられます。なぜでしょう?それは、日本が他の国との間で、国債の販売競争を始めざるを得なくなるからです。1.3%などという低利回りで日本の国債を買おうという人が、日本人以外でいるとは思えませんし、それも、借金の対GDP比が200%に到達寸前という財政状態の国であれば、なおさらです。しかもデータで明らかなように、日本の消費者が国債を引き受ける余力は、急速に衰えてきています。
日本政府は、出口の見えない岐路に立たされており、年金支給額が将来削減されることについては既に公表済みです。日本は、増税を行うか通貨を大幅に切り下げるのでない限り、年金や医療費をまかなえなくなるでしょう。
現在の政策は、新規に会社を立ち上げようとする人たちにとっては逆風であり、高い税率や低い貯蓄水準を勘案すれば、近い将来における経済成長はほとんど見込めないと断定せざるを得ません。この状況を打開する手っ取り早い解決策は、円を弱くして輸出を促進すると共に、日銀がインフレを容認して発行済みの国債の価値を低下させるという邪道な方法ぐらいでしょう。
それでもなお、先月は円高が進行しました。現在は1ドル92円で、わずか2年前の120円よりもずっと上がっています。これほど財政基盤が悪い国の通貨が、なぜこんなに強いのでしょうか。輸出主導のトップ企業だけの力では、それらの収益が大幅に改善されない限り、国全体を支えることはできません。現状はこのまま維持できるのでしょうか。

独断に過ぎませんが、二つの推測を述べてみたいと思います。第1に、日本人が盛んにFXなどの円キャリー取引を行っていることはよく知られています。つまり、国内では運用益が上がらないため、円を金利の高い別の通貨に交換し利鞘を稼ぐわけです。おそらく退職者たちは、このように現地通貨の形で保有しているお金を生活のために取り崩す必要があり、その際に円を買わなければなりません。
第2に、経常黒字がこのまま続くことはおそらくないということです。日本企業の中には極めて効率性が高く経営がうまくいっている会社もありますが、すべてがそうではありません。下請事業者の切捨てが度重なれば、そういった事業者の多くが存続できなくなることは必至で、中小規模企業の倒産や失業者数の増大を招くことになるでしょう。
輸出に依存している日本企業は、円安になるのを切望していますが、日銀には、円安を演出する才覚はどうもなさそうです。
日本は世界第二の経済大国ですが、経済学には「続かないものは実現しない」という原則があります。日本は、これまでと同じ道を歩き続けることはできません。あらゆる動向が日本に不利に働いています。
残念ながら、日本経済に関する私どもの予想は、明るいものではありません。
私は、日本がその生産性と経済システムを改善するための政策転換ができるよう願っています。ついでながら、教育制度と人口構成と経済の二極化が、経済復興を遂げるうえでのネックになると私は見ています。
これらの課題の解決を別としても、日本には、政治・経済の領域における構造改革が必要と思われます。日本は、国を挙げて経済の活性化に取り組まなければなりません。世界的な一流企業を支援するだけでなく、新規事業の立上げ、フットワークのいい中小企業、それらの新規参入者への重点的な資源配分、規制緩和、そして政府の不干渉を促進する新たな枠組みを構築することが必要です。過去の遺物のような会社でも、その経営スキルに応じて、生き延びるか消滅するかの選択権は与えられるべきですが、最終的には、政府の介入による支援は避けなければなりません。日本が再生するためには、新規事業の立上げ、新規参入者への重点的な資源配分、規制緩和(とりわけ若手スタッフの雇用に関するもの)、そして更に重要な点ですが、小さくてよりプロアクティブな政府とビジネスに優しい環境を促進する新たな方策を導入することが不可欠なのです。











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